皆さんは「ノセボ効果」と言う言葉を聞いた事がありますか?恐らく聞いた事がある方は少ないと思います。それでは「プラセボ効果」は如何でしょう。「あっ、それなら聞いた事がある!」と言う方は多いのでは無いでしょうか。このプラセボ効果の逆の現象をノセボ効果と言います。えっ、「それじゃ全く説明になっていない!」ですって?私もそう思いますので少し詳しく説明したいと思います。
新薬の開発を行う時に「治験」と言う新薬の有効性、安全性を確認する実験を行います。この治験では被験者を二つのグループに分け、Aグループには開発中の新薬を投与、Bグループには偽薬(全く薬の有効成分を含まない偽物)を投与します。勿論、それぞれのグループには新薬、偽薬のどちらを飲んでもらうかは秘密です。これにより新薬の有効性、安全性を検証するのです。常識的に考えれば、Aグループにのみ新薬の効果や副作用が現れ、Bグループには何の変化も認めないはずです。ところが、Bグループの被験者の中からも具合が良くなったと言う人が現れたり、逆に具合が悪くなったと言う人が現れます。この様に具合が良くなったと述べた人はプラセボ効果が現れた人、逆に具合が悪くなったと述べた人はノセボ効果が現れた人と言う事になります。つまり、それぞれの用語を説明すると以下の様になります。
プラセボ効果とは「服用した人が心の中で予想する作用によって具合が良くなる現象」の事
ノセボ効果とは「服用した人が心の中で予想する作用によって具合が悪くなる現象」の事
これは実際に治療を進める上で無視の出来ない非常に大きな問題なのです。つまり、「これは自分にとってとても有効性のある良い物だ」と思って飲んでいる人は偽薬でも効果のある「良薬」になる一方で、「これは自分にとって非常に害のある悪い物だ」と思い込んで飲んでいる人にとっては偽薬でも「毒」にしかならないのです。このノセボ効果が現れやすい人達は次の様な二つの特徴があると言われています。
①本人は全く治療や薬の内服を希望していないのに家族や友人などに無理やり受診されられた人
②元々心配性で副作用に過剰な関心を持っている人
特に②のタイプの人達はインターネットで信頼性の全く無い誇張された副作用を熱心に調べ、それを鵜呑みにする傾向が高いと感じます。必ずインターネットで検索する時は公の機関が公開しているページや医師によって書かれたページを参考にして下さい。
昔から「病は気から」と言います。皆さんも折角お薬を飲むのであれば、「これは自分にとってとても有効性のある良い物だ」と良い暗示を掛けてから内服する様にして下さい。それだけでも効果が強くなる可能性があります。そして何より副作用に付いて心配があれば、信頼性の低いインターネットの情報に踊らされる事無く、先ずは主治医に質問して下さい。