メンタルクリニックで「じゃあ、今日血液検査をしていって下さいね」と主治医から言われたら、あなたはどう感じますか?
「えっ!血液検査?」と思いませんか?現に「私の病名って何ですか?」の項でも、「血液検査で精神疾患を見つける事は出来ないと言っていたじゃないか!」とまたまたお叱りを受けてしまいそうです。しかし、結論から申し上げるとメンタルクリニックでも血液検査はとても重要です。
①ケース1
「ドキドキする」、「汗が出る」、「手が震える」などの症状が出現する様になり、パニック障害になったと思って当院を受診する方がいます。もちろん、パニック障害や社会不安障害などであるケースもあるのですが、血液検査で異常が見つかる事があります。それは甲状腺ホルモンの異常です。特に甲状腺ホルモンが高値になると一見、パニック障害などに似た症状が出現する事があります。
②ケース2
「眠れない」、「最近になって寝つきが悪くなった」、「寝ようとするとソワソワして落ち着かなくなる」など一見単なる不眠症に思える訴えでクリニックを受診する方がいます。しかし、詳細に症状を聞くと、「寝ようと思って布団に入ると脚がムズムズしてきて全く寝付けなくなる」と言うのです。この場合、むずむず脚症候群の可能性があります。むずむず脚症候群は鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏、妊娠、心不全、腎不全など様々な原因が考えられています。この場合、血液検査をする事で一見不眠症にしか見えなかった現象の原因を突き止める事が出来る訳です。
③ケース3
精神科・心療内科で扱う病気の中に「症状精神病」と言うものがあります。この症状精神病に付いて説明するだけでコラムを別に書く必要がある程難しい病気なのですが、極めて簡単に説明すると「体の病気が脳に影響を及ぼし、躁うつ病や統合失調症などの精神疾患に似た症状を呈する状態」の事を言います。つまり、体の病気が原因で精神疾患に良く似た症状が出現する事がある訳です。体の検査をしっかり行う事が非常に重要である事が分かると思います。この症状精神病に付いては機会があれば詳しく説明したいと思います。
ここに挙げたケースはほんの一例であり、メンタルクリニックにおいても血液検査が非常に重要である事はイメージして頂けたかと思います。皆さん、嫌がらずに血液検査を受けて下さいね。「自分はうつ病に違いない」などの思い込みで身体疾患を見落とさないためにも御協力を宜しくお願い致します。