「うつ病・うつ状態」の治療に使用する薬を抗うつ薬と呼びますが、この抗うつ薬の効果がすぐに現れるかどうかについては、実はとても難しい問題があります。このため、「すぐに効く」とも「すぐには効かない」とも言えないのです。 一般的に抗うつ薬の効果が発現するまでには内服後2~4週間の期間が必要とされています。つまり効果が早い方は2週間程度で効果を実感できる訳です。「なんだ、それくらいならなんとか待てるよ」と思われたかもしれませんが、これは何もかもが全て上手く行った患者さんのみに言える事なのです。では治療が上手く進まなかった時にはどうなるのでしょうか?
残念ながら全ての患者さんに抗うつ薬が効く訳ではありまん。初めに試した抗うつ薬で効果が出るのは約1/3の方のみと言われています。初めに試した抗うつ薬が効かない場合は別の抗うつ薬を試す事になるのですが、ここで数種類の抗うつ薬を投与して効果が出る方が約1/3です。では残りの約1/3の患者さんはどうなるのでしょうか?残念ながらこの方々は色々と抗うつ薬を試しても十分な効果を実感する事が出来ないのです。 なかなか過酷な現実だと思います。幸運にも初めに試した抗うつ薬で効果が出る約1/3のグループの中で更に効果が早かった方のみが2週間程度で効果を実感出来ますが、残りの約2/3以上の方は「すぐに効果が出る」とは言えない事になります。 更に悪い事に、抗うつ薬の副作用は薬を飲み始めてから1~2週間で出現する方が多いのです。つまり、患者さんが抗うつ薬の効果を実感できる前に副作用が出現するケースが殆どなのです。このため、全く効果が無いにも関わらず副作用ばかりが目立ってしまい途中で内服をやめてしまう方がいますが、これはとても惜しい事です。もう少し内服を継続していたら、もしかすると効果が発現していたかもしれません。ですから抗うつ薬の副作用が気になる時には自己判断で中止せず、必ず主治医に相談するようにして下さい。それが結果的に治療期間を短縮する一番の方法であると感じます。