「抗うつ薬を中止すると副作用が出現する」と聞いて皆さんはどう感じますか?「普通、副作用って薬を内服している最中に出現するもので、止めたら良くなるんじゃないの?」って思いませんか。確かにこの考え方が一般的であるのは事実です。しかし、抗うつ薬の中には急激に内服を中止してしまうと副作用が出現するものがあるのです。この現象を「中断症状」、「中断症候群」などと言います。これと非常に似たもので「離脱症状」、「怠薬症状」と言ったものがありますが、こちらはアルコール、麻薬など中毒性がある物質を急激に中止した際に生じる症状を表しています。志村けんさんのコントで手が震えて覇気の無いおじさんが、お酒を飲んだ途端に手の震えが止まり、急にしゃきっとした様子に戻る奴です。子供の頃は何の事か良く分かりませんでしたが、今思えばあれが正に離脱症状だと言えます。
「抗うつ薬の中には急激に内服を中止してしまうと副作用が出現するものがある」と冒頭で述べましたが、どのような抗うつ薬が問題になるのでしょうか?それは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれるタイプの抗うつ薬です。これを急激に中止してしまうと、イライラ感、不安焦燥感、不眠、吐き気、発汗、耳鳴、めまい、電気が走る様な痺れ、ふるえなど様々な症状が出現する事があります。そして、これらの症状は抗うつ薬内服中止後数日以内に出現する事が多いため、「抗うつ薬を止めると症状が再発するため一生止めれない」、「抗うつ薬には依存性がある」と考える患者さんが出て来る様です。しかし、中断症状は1~2週間程度で消失する事が殆どです。また、血中半減期が短いパキシルなどのSSRIで中断症状が出やすいと言った特徴があるため、もっと血中半減期の長いレクサプロなどのSSRIを使用する、又は時間を掛けてゆっくりと減量する事でこの現象は軽減する事も出来ます。つまり重要な事は「自己判断で勝手に中止しない!」と言う事です。皆さんも抗うつ薬を減量・中止する時には必ず主治医と相談し、適切な方法で減量・中止を行う様にして下さい。これによって中断症状は回避出来ると思います。